睡眠時間が足りているはずなのに、起床時に身体がだるくて疲れている感じがする人は、眠りの質が悪いのかもしれません。一方、「よく眠れない状態が続いているけど、病院に行くほどでもない」と睡眠不調の原因が分からずモヤモヤしている人もいるのではないでしょうか。
そんな漠然と睡眠の悩みを抱える人にオススメなのが、明治2年創業の日本茶専門店の宇治園が日本茶と漢方をブレンドして作った「古傳薬膳茶」です。日本茶の老舗の宇治園と漢方の中医師、薬剤師、さらにはハーブインストラクターなどの専門家が結託して誕生した薬膳茶は、今では60種類にも及びます。
今回は、その中でも睡眠の質を高めることが期待できる薬膳茶を紹介していきましょう。

茶は養生の仙薬なり
───今日取り上げさせていただきたい睡眠に良い薬膳茶の話に入る前に日本茶の老舗の企業である御社がなぜ薬膳茶の開発に着手しようと思ったのか、そのきっかけについてお伺いしたいです。
重村社長:私自身、幼い頃から毎日のように大量のお茶を飲む「お茶好き」でして。何かお茶にまつわる新しいプロジェクトを始動させたいという気持ちがずっと持っていました。そんな中、150周年を迎えたタイミングで企画したのが「古傳薬膳茶」です。
───中国から日本にお茶が伝わってきた歴史を遡ると、元々は飲み物ではなく、薬として輸入していたそうですね。ヨーロッパ圏出身の方からは、「風邪を引いたら、お茶を飲む」という話を聞いたこともあります。お茶が身体を整えてくれるんじゃないかという期待を日本人も持っていた時代があるんじゃないかと思いました。
重村社長:そうですね。臨済宗の開祖である栄西が鎌倉時代に著した『喫茶養生記』には、「茶は養生の仙薬なり。延命の妙術なり」と、五臓に対する効能が記されています。ちなみに私は昔からお茶を飲んでいるからか、ちょっとした風邪も引かなくて、病院にも約30年間の間で3回ほどしか行ったことがないくらいです。
─── そんなに風邪を引かないなんて、羨ましいです。現在の日本では、お茶を急須で飲むよりコンビニでペットボトルのお茶を買うことが多い人もいるんじゃないかと思います。お茶を飲む習慣は残っている反面、体に良い働きを期待して飲む人は、そんなに多くなさそうです。この現代の感覚と身体に良い効能を求めてお茶を飲んでいた時代を比較するとお茶に対する期待値の違いを感じます。
重村社長:薬膳茶を企画する前に、「日本茶には身体に良い成分が含まれている」ということを伝えていこうと試みましたが、日本人にとって日本茶は、あまりにも日常的すぎるということに気づきまして。
なんとかして、日本茶に対する意識を昔の「茶は養生の仙薬なり」と著されていた時代の感覚に近づけてみたいと考えた結果、「日本茶をベースにした薬膳茶を中医師、薬剤師の元で開発してみたい」と思いまして。
───なるほどです。宇治園さんの薬膳茶は、様々な茶葉や生薬がブレンドされていますが、複数種類を混ぜて一つのお茶を作る文化は日本茶にない感じがします。
重村社長:そうですね。日本茶をブレンドする発想は日本茶屋さんにはないですし、漢方屋さんには、日本茶と漢方をブレンドするという発想がないんです。ただ、よくよく調べると、「生姜ほうじ茶」のような2種類くらいブレンドしたものは商品化されているようです。
───確かに。生姜ほうじ茶は、どこかで売られているのを見たことあるような…。
重村社長:でも、私がしたいことは、もっと専門的で、なおかつ100種類は作りたい!と思ったんですよね。
───初めて作られるのに目標数値が高いところに気合いを感じます。
重村社長:あと、本店を全面改装する際に、この茶葉を入れた缶を並べたかったんですよね。

───昔、台湾を旅行した際にお茶屋さんに行きましたが、こういった大きな茶缶が並んでいるのをみたことがあります。
重村社長:中国茶や紅茶は、お茶を寝かすことも付加価値になっていくんです。宇治園本店の一角を薬膳のスペースにして、この茶缶を60種類並べています。
睡眠の質の向上に役立つラフマをブレンドした薬膳茶

───薬膳茶を本店で飲みたい場合は、完全予約制なのですよね?
重村社長:はい。今は予約制でやっていて。オンライン上でも予約できるようになっています。
猪ケ倉:私は、宇治園に勤めるようになってから、毎日お茶を飲み始めているのですが、以前まで体温が35度台で、低体温に悩まされていたのですが、今は6.5度くらいに上がりました。
日本人の平均体温は、36.89度。免疫細胞が正常に機能する体温は36.5度と言われているが、体温が1度上がると免疫力は最大で5-6倍にも上がると言われている。
参考:
https://www.kouritu.or.jp/tokyo/content/files/about/kanko/kagayaki567/567_p06_07.pdf
───猪ケ倉さんが日常的に飲まれているのは、薬膳茶でしょうか。
冷え性の方だと特に冬は寝つきにくいこともあると思うので、そういった悩みに寄り添える薬膳茶があると心強いです。
猪ケ倉:そうですね。私は薬膳の担当になって3年ほど経つのですが、その間、薬膳茶の勉強をして、日常的にも飲み合わせや食べ合わせも気を使うようになったのも影響していると思います。
睡眠と体温の関係性 人間には体温のサイクルがあり、起きている時は心臓や脳などの身体の中心部の体温が上がり活動的になる。一方、就寝時は、その中心部の体温を下げて眠る準備に入る。 眠たくなると、手足を中心に身体が暖かくなるイメージがあるかもしれないが、実は手足から放熱して体温を下げている。このように体温を下げることによって、人間は自然に眠りにつくことができる。 快眠にベストなのは、夕方くらいから体温を上げて、就寝前には緩やかに体温が下がっていること。一方、日頃から低体温で、冷え性な人は、体温調節がうまく機能していないため、不眠になりやすい傾向にある。温かい飲み物を飲むことによって、深部の温度が上がると考えられている。 |
重村:では、お茶ができたので飲んでみてください。こちらは、ほうじ茶・ラフマ・蘇葉・アマチャヅル・夜交藤が入ったお茶です。中でもラフマは、睡眠の質を高めることで知られている葉っぱです。忙しく休めない人におすすめしている薬膳茶になります。

【古傳薬膳】肆拾伍
ラフマには、ヒペロシドとイソクエルシトリンという2つの成分が含まれており、一時的なストレスや日中の眠気を緩和する機能や、睡眠の質の向上を促す作用があると報告されている。No.45に含まれているラフマは、新疆や中央アジアやヨーロッパなどで自生するハーブ。ラフマに含まれているヒペロシドやイソクエルシトリンなどは、「セロトニン」を増やす働きがあると考えられており、古来から生薬として人々の間で親しまれてきた。そのほか、心を落ち着ける成分も含まれていることから、精神的ストレスや疲労感を和らげる機能も期待できる。
───香りと風味もすごく良くて、漢方が入ったお茶というより、美味しい和風のブレンドティーのような感じがします。大体、どれくらいの期間、薬膳茶を飲むことをお勧めされていらっしゃいますか?
重村:薬膳茶を飲む期間は、一ヶ月から二ヶ月くらいをオススメしていますね。漢方は、気分の落ち込みや、苛立ちを引き起こす気を整えてくれるとも考えられています。
───なるほど。この薬膳茶の淹れ方のポイントも伺いたいです。

猪ケ倉:こちらの薬膳茶はほうじ茶ベースなので、100度のお湯を注いでいただけるものになっています。茶葉は5gほどで、一煎目がなくなっても、その茶葉にお湯を注ぎ足して飲んでいただけます。急須に3〜4杯くらいは繰り返して飲めますよ。
重村:日本茶はお湯を注ぎ足して飲めないので、そこが薬膳茶と圧倒的に違う点です。ほうじ茶ベースだと熱湯で飲んでいただけますが、こちらの玄米茶ベースの薬膳茶は少し低めの温度で飲んでいただくことをオススメしております。

───この8番の玄米茶ベースの薬膳茶も睡眠の質を上げるラフマが含まれているのですね。ほうじ茶ベースよりも香ばしい感じがして、より日本で親しまれている味に近いような…。
重村:そうなんです。弊社の薬膳茶が他のものと圧倒的に違うところは、やはり日本茶をベースにしていて、苦みがないところです。なので、普通のお茶の代わりとして置き換えて飲んでいただけるんです。いくら健康に良いものだとしても味に馴染みがなかったら続かないので、美味しいものを作りたかったんです。
───確かに!美味しくなかったら、いくら身体に良いものでも結局、続けられなくなる人もいますよね。
重村:美味しくない食べ物って、心が幸せにならないと思っています。やっぱり美味しいと思ってこそ、心の健康にもなる。
あと、食生活の改善って、すごく難しいのですが、飲料生活の習慣を変えることは簡単なので、そういう点でもおすすめです。薬膳茶の場合は、自分のマイポットさえあれば始められますね。
───私は水を飲むのが苦手な上に不整脈なので、医者からカフェインを飲むことを控えるように言われていまして。なので、カフェインが入っていなくて睡眠にも良い成分が含まれている漢方茶は、身体に合いそうで個人的にも試してみたいです。
重村:なるほど。水分は全身に必要とされているので、不足してしまうと体の中で水分の取り合いが起こってしまいますよね。そしたら血液の循環が悪くなり、ドロドロ血や体の冷えにもつながる。
大した病気じゃないのに何となく調子が悪い時は、白湯やほうじ茶などで内臓を温めることから始めていただければいいかと思っています。
───特に寒い季節は、意識的に身体を温めておきたいですね。最近の風潮として、お茶よりも水分を取ることが推奨されているイメージがあります。特に就寝時には、大量の汗をかくため、寝る前にお茶ではなく白湯や水を飲むように心がけている人も多いのではないかと思います。
重村:確かにカフェインを多く含むものを寝る前に飲むと眠れないということはあるかと思います。カフェインを含め、身体を冷やす作用のあるものは、TPOに合わせて飲むのが良いですよね。
お茶でいうと、特に煎茶は、カフェインが多く含まれていることもあり、身体を冷ます働きがあるので、特に冷え性の方は寝る前に飲むのを控えてもらった方がいいですね。

───睡眠の悩みを抱えて、薬膳茶を買いに来られる方はいらっしゃいますか?
猪ケ倉:いらっしゃいますよ!ただ、この薬膳茶に入っているラフマという葉っぱは、睡眠の導入が良くなるというよりも、睡眠の質を向上する働きがある成分が入っていて。
実際に購入されたお客様からは、「お茶を飲み始めてから起床時にすっきりするようになった」という話を伺ったことがあります。
───なるほど。今回お話を伺ってみて、特に宇治園さんの薬膳茶は「お茶が好きだけど、カフェインを控えている」「睡眠の質を上げる働きのあるものを気軽に美味しく取り入れたい」という人にピッタリなんじゃないかと思いました。
重村:朝起きたら目を覚ますためにすぐ熱いコーヒーを飲む方もおられると思いますが、コーヒーだと身体が冷えてしまう恐れがあります。カフェインには、覚醒作用がありますが、それと身体を温めるというのは別問題。
コーヒーは好きなだけ飲んでもいいけど、朝イチではなく、自分の平熱に上がっている状態の時に飲むことをオススメしています。体温が下がった状態で1日をスタートさせてしまうと、身体がだるくなってしまうんですね。「お昼ご飯食べた後あたりから、やっと元気になる」っていう方、いますよね?
───うーん、私、そのタイプです。起床したら、まずは白湯などで身体を温めてから、コーヒーを飲みたい人は飲むのが良いのかもしれませんね。
重村:特に低血圧の人は、朝の時点で体温をわざわざマイナスに下げてしまうと、倍以上の力を使って、体温を上げなきゃいけない。なので、まずは平熱を上げるために白湯かお茶を飲むことをおすすめしています。
──なるほどです。睡眠の質を上げたい人は、日中の生活習慣を見直すことが大事ですね。その一つの手段として、普段飲んでいるお茶を薬膳茶に替えてみるのも手軽に始められて良いですね。私も試しに飲んでみたいと思います。
店舗名:宇治園 古傳薬膳
住所:大阪府大阪市中央区心斎橋筋1-4-20 宇治園ビル1F
定休日:予約制
営業時間:11:00~18:00 (料理L.O. 17:30 ドリンクL.O. 17:30)
茶葉販売は10:30から19:00まで可能。オンラインでも販売中。